治療成績は、８割以上の方に効果があるものの、残念ながら全員に効く訳ではありません。おおよそですが、

　　　２割の方は、花粉症が治癒します。
　　　３割の方でかなり楽になり、対症療法の薬を大幅に減らせます。
　　　更に２〜３割の方は、症状は出てしまいますが以前より楽になります。
　　　１〜２割の方には、残念ながら効果がありません。

治療効果には個人差があり、どの程度改善するかはやってみなければ解らない、というのが実情です。
従来の注射による皮下免疫療法の方が、舌下免疫療法より若干良い治療結果が出ているようです。
しかし舌下免疫療法には、自宅で治療を行えるという圧倒的なアドバンテージがあり、副作用も皮下免疫療法より少なくて済みます。

スギ花粉症、ダニのアレルギー性鼻炎でお悩みの方には、皆さんにお勧め出来ますが、特に有用と思われるのは以下の方々です。

　アレルギー性鼻炎が酷く毎年たくさんの薬を使っており、減らしたい方
　眠気など、薬の副作用が出やすい方
　女性の方で、将来妊娠した際に薬が使えないのが心配な方
　受験期がスギ花粉症と重なるので、その前に良くしておきたい方
　若い方で、今後何年もアレルギー性鼻炎に悩むのか、と憂いている方

特に、若い方ほどこの治療はお勧めです。その理由は、

　◎ 「数年間の治療を行う事で、その後長く快適な生活を送る」というのが
　　　この治療の肝なので、余命が長い人の方が意義が大きい
　◎ アレルギー症状が次から次へ現れるという、「アレルギーマーチ」を
　　　抑制出来る可能性がある
　◎　静岡市など、若年者の医療費助成がある自治体にお住まいの
　　　幼児〜高校生は、治療費の負担が少なくてすむ

　重症の気管支喘息がある方
　重い心臓の病気を合併している方
　癌や免疫不全等の病気を治療中の方
　舌下免疫療法の薬を使ってショックを起こした事がある方
　妊娠中、及び近日中に妊娠希望の方
　
高齢者は適応外ではありませんが、治療効果がやや弱くなると予想されます。
コストパフォーマンスを考えても、症状が出た時だけ従来通りの対症療法で済ませる、というのも悪くないと思われます。

SLITをスタートする時期ですが、

　　◎ダニに関しては、制限がありません。1年中いつでも始められます。
　　◎スギに関しては、スギ花粉飛散時期には新規開始出来ません。
　　　（既に導入済みの方の、維持療法に関しては問題有りませんが）　
　　　スギの新規導入は６月〜１２月半ばまでに限られます。
　　　
SLITを始めようとする場合、まず本当にスギ・ダニのアレルギーがあるのかどうか、血液検査にて確認する必要があります。
過去に血液検査を受けておられる方は、その結果用紙をご持参下さい。他院の物でもOKです。かつて当院にて実施した方は、当院に記録が残っておりますので大丈夫です。
これまで血液検査を行った事がない方は、新たに採血を行います。結果が出るのに4〜5日かかります。

新規導入の初回に関しては、各種説明・確認等があるのと、初回服用を院内で行いその後30分様子を見る関係で、１時間位かかります。
従って、初回のみ予約制といたします。
何かあった時の緊急対応の充実状況を考え、導入は平日のみとし、土曜および休前日は不可とさせて頂きます。

１日１回、少量の治療薬から服用を始め、以後は一定量を毎日、数年間に渡り
服用を継続します。時間のかかる治療法で、定期的な受診が必要です。

スギ花粉症の場合は初回のスギ花粉飛散シーズンから、ダニアレルギーの場合は開始後数ヶ月してから、効果が出始めます。
年単位で継続する事で最大の効果が得られます。まずは２年ほど行い、効果を感じられたら継続し、４〜５年間治療を行う事をお勧めします。

治療終了後も長期間効果があり、完全に押さえられない場合でも、対症療法薬の使用量を減らす事が期待できます。

人によっては、治療終了後数年たって、効果が減弱する場合があるようです。
そうした場合、再度１〜２年の追加舌下免疫治療（ブースター治療）を行った方が良い場合があります。

アレルギーがある患者さんの体に原因物質を入れる訳ですから、アレルギー症状が出現する事があります。「副反応」と呼ばれ、約半数の方で発生します。
治療開始１ヶ月以内に起こる場合が多いようです。主な副反応は、

　　　　口の中の腫れ・かゆみ・違和感、
　　　　口内炎や唇の腫れ、耳のかゆみ　等です。
　
これまでの実績では、重篤な副反応は極めて稀であり、従来の皮下免疫療法よりもかなり安全とされます。副反応が出たとしても、ほとんどの方でその後も安全に治療を続けて頂く事が出来ます。
まれに、アナフィラキシー・ショックといった強い副作用が発現する恐れがあります。これまでの所、日本国内及び世界全体で見ても、極少数でしか起こってはいないようです。

舌下免疫療法にかかる費用ですが、他の治療・検査・薬の処方が無い維持期の場合で、医院での治療費と薬局での薬代と合わせて

　1ヵ月あたり スギの場合　　　２千円台半ば
　　　　　　　ダニの場合　　　３千円程
　　　　　　　スギとダニ併用　４千円台半ば

となります。(全て、保険３割負担の場合)
スギ花粉飛散時期のみでなく、1年を通じて治療をしますから、毎月ほぼ同額の治療費が必要となります。

なお静岡市など、子どもの医療費助成制度が充実した自治体にお住まいの若年者の場合、薬代が助成されますので、格段に安い費用で治療が受けられる事になります。